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追悼レスリー・トーマス Dangerous Davies: The Last Detective (1976) - Leslie Thomas

 こんなあまり更新もしないしょ~もないブログでも、たまに覗きに来て「拍手」ボタンを押して行ってくださっている方も相変わらずいるようで、有難いことで。

 今日の記事も意図せず一年ほど寝かせてしまっていたもの。以前にも書いたかもしれないが、とっくに賞味期限の過ぎた追悼記事ほどマヌケなものもないかもしれないが、まぁ、何もないよりはましだろうということで、これ以上は深入りせずに。

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 今日の記事はLeslie Thomas(レスリー・トーマス)の追悼特集。著者の名前は実際には「レズリー」と濁るのかもしれないし、「トーマス」もむしろ「トマス」とした方が近いのかもしれないが、ここでは一般表記に倣った。と言っても、殆ど日本では知られていない著者だろうから、そもそも一般表記も何もないのかもしれないが。実際に亡くなったのは昨年で、忙しさを言い訳に追悼記事のアップを延期してしまっていた。レスリー・トーマスの訃報を伝える記事はコチラ

 一般にはThe Virgin Soldiers(邦題は「童貞部隊」というらしいが、どうやら絶版らしい)とその続編、またはそれらの映画化作品で知られている著者。これらの作品はジャンルとしてはコミック(ユーモア)小説、コミック映画に分類されるようなもので、世界的には大ヒットしたらしいが、それすらも日本ではあまり知られていないようで。

 ちなみにこのコミック小説シリーズの原作は、兵役についたレスリー・トーマス自身の経験を基に書かれたものらしい。そんな若くて血気盛んなイギリス軍の兵士達と現地の売春婦(というと時代や地域によって身分も世間の印象も全然違うので注意が必要だが)を始めとする女性たちとの可笑しくもどこかもの悲しさも漂うドタバタぶりを一つの軸に展開される悲喜劇。と言ってもやはりコメディ要素が強いか。

 最近では各国で女性兵士も増えてきてその姿をテレビ等で見ることもあるので、Virgin Soldiersと聞いて想像力(妄想?)を激しく掻き立てられた人も中にはいるかもしれないが、残念ながらここで出て来るVirgin Soldiersは男ばっかり。女性キャラも出て来るが、現地の水商売の女性か、又はVirginではあってもSoldierではないキャラばかり。改めて言うまでもないかもしれないが、普通英語でVirginというと男女の区別はない。逆に、どうして日本語では男女で言い方が異なるのか、というのは中々に興味深い問題だが、時間をかけて自分でリサーチするほどでもないので以下スルー。

 さて、長くなって来たので、前置きはこれくらいにしてさっさと今日の作品紹介へ。


Dangerous Davies


 今日紹介するのはレスリー・トーマス原作のDangerous Davies: The Last Detective。言うまでもなく(?)邦訳はまだされていないようで。このDangerous Daviesを主人公とした小説はこの後シリーズ化され、合計4作品が執筆・出版されている。今日紹介している作品が第一作。

 ちなみに上に貼り付けた画像は所謂オムニバス本のもので、タイトルにThe Complete Dangerous Daviesとあるが、ちょっと詐欺みたいだが、ここには第一作のDangerous Davies: The Last Detective (1976)、第二作Dangerous in Love (1987)、そして第三作の Dangerous By Moonlight (1993)は所収されているが、第四作Dangerous Davies and the Lonely Heart (1998)は入っていないので、実際にはComplete(「完全版」)ではない。


 主人公のDavies巡査については、この作品の冒頭にある書き出しにて簡潔にまとめられている。

 < This is the story of a man who became deeply concerned with the unsolved murder of a young girl, committed twenty-five years before.
  He was a drunk, lost, laughed at and frequently baffled; poor attributes for a detective. But he was patient too, and dogged. He was called Dangerous Davies (because he was said to be harmless) and was known in the London police as 'The Last Detective' since he was never dispatched on any assignment unless it was very risky or there was no one else to send. >


 一応、上記冒頭部分を適当に訳した上でネタバレしない程度に加筆修正してあらすじを作成してみると、こんな感じ。

 < - 仕事は出来ず酒にもだらしない「デンジャラス」ことデービス巡査。危険な仕事、退屈で時間だけはかかる割にあまりにも得るものが少ない仕事等、誰もやりたがらない役目ばかり押し付けられるため、同僚からは嘲笑の的となりながらもある意味で重宝もされる存在で、重大案件では誰も適任者がおらず他に選択肢がない場合に限り最後に漸く声がかかることから 'The Last Detective' (「最後の刑事」)としても知られている。
   地元出身で凶悪犯罪にまで手を染める札付きの極悪人として名を馳せたRamscarが数年に渡る国外での活動を終えて極秘に帰国・帰郷しているとの情報が寄せられる。Special Branch(公安課)からRamscarの居所を突き止めるべく依頼を受けたMetropolitan Police Forceだったが、公安課としては出来るだけ自らの手を煩わさないように、捜査を慎重且つ極秘に進めるよりは先方に敢えて気づかれるように進めることでRamscarを慌てさせ早めに姿を現すか事に及ぶように仕向けたいという。そこで、怪しまれない程度に手際悪くRamscarの捜索に当たる適任者としてデービスに白羽の矢が立つ。思いもよらない大任に張り切る中、Ramscarに関するそれまでの膨大な資料を読み進めるうちに行き当たった25年前の少女Celia Norrisの失踪事件にすっかり心を奪われてしまうデービスだったが - >


 個人的にはデービスの友人Mod Lewisのキャラが気に入った。

 < Mod was happy to be known as a philosopher. His great talent was loyalty (he had been faithful to the same Labour Exchange for twelve years) and he knew many unusual and useless things, for he had read half the books in the public library. >

 dole money(失業手当、というか生活保護といった方が正確か)をもらいつつ、昼は図書館で本を読んで時間を潰し、夜は友人の「デンジャラス」と飲み明かすという生活を送っている。作中のキャラでフィクションとは言え、何とも羨ましい。私は酒は全然飲まないが、ある意味理想の生活である。現実には中々そう行かないのが悲しいところではあるが。


 作品全体の感想を一言でいうなら、フロスト警部シリーズのコージー版といった感じ。時代設定も実際に書かれた時期もフロストものより前なので、フロストものと比較すると全体的にのんびり、ほのぼのといった雰囲気が漂っている。また、主人公のデービスもフロスト以上に無能で不器用な設定なので数多くのことをこなせないのか、札付きの大物の居場所を探しつつ(比較的のんびりと)25年前の少女失踪事件の究明に専心するといった流れで、自然とモジュラー型ではないノーマルなミステリ作品の形を採っている。

 デービスは、30過ぎの不器用(clumsy)で酒癖の悪い、巡査としては無能(だが決して無気力ではない)な負け犬として描かれるが、所々で不器用だったり頼りなかったり酒で失敗したりといったエピソードは出て来るが、フロスト始めその他のミステリ作品シリーズの主人公と比較しても、実際にはそれほど無能といった印象は受けない。多少酒癖が悪いことも含め、ある意味で日本の平均的なサラリーマンみたいな感じか。母性本能でもくすぐるのか、(寝室は共にしていないが)妻がいながら少し前には愛人がいたり、少女から熟女にまでもてたりと、ある意味で現代の日本の平均的なサラリーマンよりも勝ち組かも。そんな訳で、主人公に悲愴感はまるでなし。その辺の孤独感がないところや時折はさまれる下ネタ系の描写の点でも、フロストものに比べてエッジの利いたダークさといったものは感じられない(又はその程度が弱い)。そのため、あくまでフロストものとの比較ではあるが、良くも悪くもコージー作品の体をなしている。

 逆に、上記に挙げた点を除けば、かなりフロストものとの共通点・類似点を見出すことができ、下品で粗野なセリフや描写も盛り込んだユーモアある筆致もいかにも男性推理作家のそれといった感じ。



 フロスト警部シリーズのファンはもちろんのこと、他のイギリスの男性推理作家によるミステリ作品のファン、コージーものの好きな人にもお薦めできる作品。


 最後に -
 恐らくユーモアのある作品を書くのが難しいのだろう、イギリスでもセンスの良いユーモア作品を書ける作家は決して多くない。そんな作家の一人が亡くなるのはいつでもとても残念なことである。
 レスリー・トーマスのご冥福をお祈りして -



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読んだ本、視聴したテレビ番組・ラジオ番組・音楽の感想など。やや英語の作品や洋楽、特にイギリスのコメディやミステリ作品に偏向。

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