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Mr Wray's Cash Box (1852) - Wilkie Collins

 今日紹介するのはWilkie Collins(ウィルキー・コリンズ)原作のMr Wray's Cash Box(or The Mask and the Mystery)。

 これはクリスマスの時期に読んでレビューしようと思っていたのに結局出来なかった作品の一部。実はその前の年にも一回読んでいたのだが、同様の理由でレビュー記事を書かないまま飛ばしてしまった。昨年末にまた改めて読んだのだが、またスルーするともうレビューすることもないかと思って、今回は敢えてメモ程度にでも残しておくことにする。

 この作品を手にしたきっかけは、ミステリ小説の嚆矢の一つとされるあのThe Moonstone(邦題「月長石」)を書いたウィルキー・コリンズの作品で副題にMysteryという語があったため。尤も、ミステリ小説の起源で議論になる際にもThe MoonstoneやThe Woman in Whiteと違って作品名が挙げられることがなく、また読む前からウィルキー・コリンズの作品では数少ない(唯一の?)クリスマス譚であるとどこかで聞いていたので、最初から所謂ミステリ作品ではなくCharles Dickens(チャールズ・ディケンズ)のA Christmas Carol(邦題「クリスマス・キャロル」)のウィルキー・コリンズ版を読むつもりで読んでみた。

 で、結論から言うと、当初の予想はほぼ当たっていたということで。以下、一応あまりネタバレはしないように書こうと思うが、残念ながらウィルキー・コリンズのこんなマイナーな作品を読む人もそうはいないだろうから、完全ネタバレでもあんまり影響はないのかも。言うまでもなく、邦訳は、少なくとも文庫本のようなすぐに手に取れるような形では入手できないようで。可能性は低いだろうが、もし原文で読んでみようという人がいたら、英文テキストはコチラで読むことができる。


Mr Wrays Cash Box


 話の舞台は恐らくはStratford-upon-Avonからはそれほど離れていないであろう設定のTidbury-on-the-Marsh。主な登場人物はMr Reuben Wray、その孫娘のAnnie、そして二人の助手兼用心棒兼召使で密かにAnnieと結婚の約束をしているJulius CaesarことMartin Blunt。


 一応、あらすじというか簡単なイントロくらい書いておくか。

 - ある日Tidbury-on-the-Marshで薬局兼銀行支店を営むMessrs Dunball and Darkを訪れたのはAnnie Wrayと名乗る18、9歳の少女。そこで軟膏を購入したAnnieは同時に、希望者にElocution(雄弁術/演説法)を教授するという祖父Mr Reuben Wrayの宣伝用紙を外から見えるよう店の窓に出してくれるよう店主に依頼する。見知らぬ少女からのあまりに唐突且つ突飛な依頼にとまどう店主Mr Dunballだったが、若い店員によると、少女は数日前に老人と若い男と一緒に近所に越して来ており、その際に老人はキャッシュ・ボックス(現金箱)を抱えていたという。Tidbury-on-the-Marshのようなところに来てElocutionを教えるというMr Wrayとは果たして何者なのか?そして彼が抱えるキャッシュ・ボックスの中身とは? -

 中々うまくイントロが書けないが、少しはミステリ作品っぽい感じがするだろうか(まぁ、所謂ミステリ作品ではないんだが)。


 作品を読んでみての第一印象としては、文学青年による習作といった感じか。

 < You are a wise man, Mr Dunball; but you won't solve those two mysteries in a hurry, sitting alone in that branch bank sentry-box of yours!--Can anybody solve them? I can. >

 と言ってみたかと思えば、

 < Perhaps, by this time, you are getting tired of three such simple, homely characters as Mr and Miss Wray, and Mr 'Julius Caesar', the carpenter. I strongly suspect you, indeed, of being downright anxious to have a little literary stimulant provided in the shape of a villain. You shall taste this stimulant--double distilled; for I have two villains all ready for you in the present chapter. >

 と、独り言なんだか読者に話しかけているんだか分からないような言い回しに思わずオイオイと突っ込みたくなるような箇所も結構あるが、そこはクリスマス譚ということで、やはり最後にあるようにStory for a Christmas Firesideとして周囲に話して聞かせるようなものを想定しているのかも。

 ただ、後にThe MoonstoneやThe Woman in Whiteを書くことになる著者の作品と言うことで先入観があるのかもしれないが、やはりかなりの文学的センスを感じさせる描写や展開が散見されるような気も。少なくとも読んで時間の無駄だったと思わせる作品ではなかった。


 以下、読んでその場で思いついたこと、感じたことを列挙。

 ・japanという単語(動詞?)があるということをこれまで知らなかった。やはり「日本」から来ているんだろうか。

 ・まさかここでcopyrightという話が出て来るとは。さすがWilkie Collinsは法律を学んだだけあってやはりそちらの素養を持った人なんですな。The Woman in Whiteを読んだ時も思ったが、初期のミステリ系作品を書いた著者の中に法的知識・視点を持ち合わせた人がいたのはその後のジャンルの発展にとって幸運な出来事だったと改めて思う。著作権や作品の個人所有・他者との共有等、現代にも通じるテーマにもほんの少し触れられていたのが興味深かった。ところで、型(mould)を使って作成した像を第三者に販売して利益を得るのは著作権に引っかからないんだろうか。

 ・最後はMr Colebatchまでハッピーになってしまって、老いも若きも皆でハッピー・エンド。ここのところはクリスマス・キャロルと一緒ですな。

 ・逆に、現実と区別がつかない夢というより、夢と区別がつかず混同された現実によって主人公が苦しむところがクリスマス・キャロルとは異なる点か。

 ・ < ... the vital question for her, and for all girls, is not how high, but how good, she, and they, marry. >
 なんてあるが、敢えてこう書いているところを見ると、やはり当時のイギリスでも相手の身分や階級はもちろんのこと、見た目も資産も大事だったんですな。現代の婚活でも就活でも、いくら周りに言われても「理想は高く」と上にばかり目が行ってしまうのは悲しくも変わらない現実のようで。


 完全ネタバレを避けたので何ともしまりのないレビューになってしまったが、作品自体もミステリというより寧ろディケンズの「クリスマス・キャロル」に近いような雰囲気で、以前レビューしたThomas Hardy(トーマス・ハーディ)のThe Thieves Who Couldn't Help Sneezing(邦題「盗賊とくしゃみ」)でもそうだったが、緊迫した場面でもどこかノンビリゆったりした作品。

 そんな訳で、ミステリ作品のファンよりも、ディケンズの「クリスマス・キャロル」のような作品が好きで、クリスマスの時期に「クリスマス・キャロル」以外の中短編が読みたい方にお薦め。こうしてみると、やはりレビュー記事としては時期を逸してしまったようで。



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個人的なメモ・備忘録・独り言

 前回の記事から一カ月以上開いてしまったようで、書きとめておきたいことはいっぱいあったが、いずれも随分賞味期限が切れたネタで。

 ・小田さんとタモリさん歴史的和解
 あの「笑っていいとも」出演から約30年か。
 タモリさんも嫌いじゃないが、さすがにミュージック・ステーションの司会をしている際にAKBだのジャニーズだのの悪口や批判めいたことを言ったら、今だったら視聴者から相当に叩かれたり番組を降板させられたりするだろうが、似たようなことをラジオ番組でオフコースやさだまさし(松山千春もだったか?)らにやっていたというのだから、当時は今と比べて何とも公の場や電波を通じての発言に寛容だったということだろうか。
 ヤフーのコメントには「小田さんもタモリさんも歳をとって丸くなって」なんて声が多かったようだが、歳をとって丸くなって以前に許せなかった相手を許せるようになったというなら分かるが、この件に関しては元々は悪かったのは100%タモリさん側。それを小田さん側から歩み寄って握手を求めたというんだが、こういうのは「丸くなった」というのとはちょっと違うような。小田さんのことだから、今でも多少の葛藤はあっても、終活というか、締めの段階に入ったことを自覚していろいろなことに自分から区切りを付けられるときに付けているんでしょうな。

 ・スキマスイッチ舌禍
 スキマの二人の口の悪さはクリスマスの約束でもお馴染みだが、今回はさすがにちょっと度が過ぎたようで。それにしてもその後の騒動の広がりは、当人や店側よりも周りがせっせと火に油を注いでいたような。何事も初動が大事なんだろうが、現代のSNSの難しさを改めて感じた。スキマの謝罪にしても、大分遅れて公式に発表されて、それに対して外野が「誠意が感じられない」とか騒いでいるのにも何か違和感を覚えてしまった。本来は謝罪と言うのはもっと個人的なものだと思うが、公式に発表し、それに対して第三者が批判しているのを見ると、どうも謝罪する側も批判する側もどこかずれているような。何とも難しいもんですな。

 ・サッカー日本代表監督解任/理研問題
 あっけなく監督解任。しかし相変わらず日本サッカー協会は殆ど責任を負わず。もう腐ってますな。同じことが理研にも。ホントに一部の無能で無責任な連中のためにしわ寄せが行く現場で頑張っている9割超の人が気の毒でならない。が、どこでも氷山の一角なんでしょうね。やだやだ。

 プレミアはここに来て漸くSouthamptonが失速気味。まだ頑張って欲しいところだが、そうなるとManU、Arsenal、Spurs、Liverpoolといったところがチャンピオンズ・リーグ出場を逃してしまうので、それはそれで残念。それにしてもSpursとLiverpoolはヨーロッパ・リーグでは全くやる気が感じられないが、やはりチャンピオンズ・リーグじゃないと中々気合も入らないのだろうか。Evertonがそうでもないところを見ると、プレミア勢にとってのヨーロッパ・リーグの位置付けというのも何とも微妙なもので。

 中学一年の男子生徒殺害事件は何とも気分の悪いもので。それにしても、全然話は変わるが、テレビやYoutubeで散々流れたり仕舞には学校でもわざわざ授業で流すバカな教師もいたようで、あれだけイスラム国の処刑シーン等を見る機会があったら、中には良くも悪くもそれに影響される生徒・子供が出て来るのは必然だと思うんだが、モザイク処理等しているとは言え、どうしてああいう映像をメディアは規制せずに垂れ流すんだろう。もちろん今回の事件でそういったものに影響されるようなことが実際にあったのかどうかは現段階では不明であるが。

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読んだ本、視聴したテレビ番組・ラジオ番組・音楽の感想など。やや英語の作品や洋楽、特にイギリスのコメディやミステリ作品に偏向。

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