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G・K・チェスタトン「折れた剣」: The Sign of the Broken Sword (1911) - G. K. Chesterton

 今日紹介するのはG. K. Chesterton(G・K・チェスタトン)原作のFather Brown(ブラウン神父)シリーズ第一作の短編集The Innocence of Father Brown(邦題「ブラウン神父の童心」)所収のThe Sign of the Broken Sword(邦題「折れた剣」)。

 チェスタトンの著作の多くは著作権が切れているのかネット上で無料で読める。この短編集はいろんなファイル形式で、例えばコチラで入手可。「折れた剣」単独でウェブ上で読むなら例えばコチラで。


 邦訳は、例えば創元推理文庫の「ブラウン神父の童心」(中村保男 訳)として入手可能。


ブラウン神父の童心


 以下、多少ネタバレしている可能性あり。

 何とも不思議な話。引用したくなるような名セリフ(迷セリフ?)や突っ込みどころが満載。しかもこの作品の後に書かれた作品をいくつも連想させる、実に好奇心を刺激してくれる作品。

 ある意味どこかミス・マープルの安楽椅子ものといった風情もあり。もちろんFlambeauにしてみれば、実際には「安楽」どころかブラウン神父にあちこち連れまわされる訳だが。また、ジョセフィン・テイのThe Daughter of Time(邦題「時の娘」)やコリン・デクスターのThe Wench is Dead(オックスフォード運河の殺人)のように、安楽椅子ものでも歴史ミステリーとでも言うのか、過去の謎を解き明かす又は一部の(ここでは少なくともFlambeauの)誤解を解いて行く流れ。また、Let sleeping dogs lieではないが、クリスティ原作でミス・マープルもののSleeping Murder(邦題「スリーピング・マーダー」)も思い出された。あれは穿り返すべきでなかったものを穿り返したばっかりに事件が解決する一方で新たな犠牲者が出る話だっけ。ここではブラウン神父は賢明にも(?)寝ている犬を確認した上でそのままやり過ごしている。

 突っ込みどころもたくさんあるが、先ずは何と言っても、あまりに物証が乏しいためにここで披露されるブラウン神父の推理もあくまで個人の唱える一説に過ぎずそれほど説得力のあるものではないという点が挙げられる。ただ、私はその辺りは比較的いい加減な人間でそれほど拘らないタイプなので、これくらい「ユルい」方が寧ろ好みかも。

 それと本作品で気になったのは、ブラウン神父のFlambeauひいては読者をある時は試すような、そしてある時は焦らすような説明の仕方。自分が知っていることを何とも勿体ぶった様子で小出しにしてまるで相手をおちょくっているよう。ちょっと鼻につくような感じも。

 < After the first silence the small man said to the other:
  "Where does a wise man hide a pebble?"
  And the tall man answered in a low voice: "On the beach."
  The small man nodded, and after a short silence said: "Where does a wise man hide a leaf?"
  And the other answered: "In the forest."
  There was another stillness, and then the tall man resumed: "Do you mean that when a wise man has to hide a real diamond he has been known to hide it among sham ones?"
  "No, no," said the little man with a laugh, "we will let bygones be bygones." >

  "Where does a wise man hide a pebble?"こんなセリフを連発するが、自分がwise manでFlambeauはそうではないみたい(実際そうなんだが)。ちょっと嫌味っぽいような。

 < "I am only looking for one word," said Father Brown. "A word that isn't there."
  "Well," asked Flambeau; "are you going to tell me anything about it?"
  "I must divide it into two parts," remarked the priest. "First there is what everybody knows; and then there is what I know. Now, what everybody knows is short and plain enough. It is also entirely wrong." >

 これもちょっと上から目線か。随分な勿体のつけようで。

 < "... This is all I have to say; nor shall any earthly consideration induce me to add a word to it." >

 なんてくだりもあるが、その後でブラウン神父がしゃべること、しゃべること。それなら最初から全てぶちまけてしまえば良いんだが、それだと作品にならないんだろうな。

 < "You are still full of good and pure thoughts," said the other. "It was worse than that."
  "Well," said the large man, "my stock of evil imagination is used up."
  The priest seemed really doubtful where to begin, and at last he said again:
  "Where would a wise man hide a leaf? In the forest."
  The other did not answer.
  "If there were no forest, he would make a forest. And if he wished to hide a dead leaf, he would make a dead forest."
  There was still no reply, and the priest added still more mildly and quietly:
  "And if a man had to hide a dead body, he would make a field of dead bodies to hide it in."
  Flambeau began to stamp forward with an intolerance of delay in time or space; but Father Brown went on as if he were continuing the last sentence: >

 "And if a man had to hide a dead body, he would make a field of dead bodies to hide it in."ここまで来るとクリスティでもポワロのABC殺人事件っぽいかも。

 いろいろと示唆に富む興味深い話だがドラマ化は難しいだろうな、と思っていたら、Andrew Sachs主演のラジオドラマシリーズでもMark Williams主演のテレビドラマシリーズでもKenneth More主演のテレビドラマシリーズでもドラマ化されていなかった。これは短編集The Innocence of Father Brown(邦題「ブラウン神父の童心」)所収の作品では初めてのこと。よって、この短編のドラマ化作品の紹介はなし。


 ブラウン神父ものの中でも異色作の一つとしてブラウン神父もののファンにお薦め。一般のミステリ・ファンにはかなり微妙な作品だと思う。



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個人的なメモ・備忘録・独り言

 ノーベル物理学賞で日本人の3人が受賞とか。おめでとうございます、ということで。それにしても化学ではないにしても、ノーベル物理学賞というイメージが全くないのは今回の受賞の研究・発明の内容があまりに工学的だからだろうか。一時ノーベル化学賞が随分バイオ寄りになっているという意見が一部にあったが、ノーベル物理学賞も傾向が変わったというのか随分「応用性」、「実用的」といった点が重視されるようになったものである。これが果たして短期的なものなのか、中長期的な傾向なのか、興味深いところ。数少ない天才が切り開くというよりも、必ずしも天才ではなくても相当に優秀な学者がコツコツと工学的な学問で積み上げて行った成果が認めらえるようであれば、2、30年前の研究なら日本を始め今後アジア系の学者のノーベル物理学賞の受賞者がもっと出ることも期待できそう。最近の研究になると、いくら「応用性」、「実用的」なのが重視されてもフットワークも要求されるので、再び日本はじめアジア系の学者には不利かもしれないが。

 小保方さんの博士論文が一年間の猶予期間付ながら再提出を求められ、条件を満たさない場合は学位が取り消されるそうで。早大の再調査はそれはそれで評価するが、そうなるとその前の調査委員会の結論は一体何だったんだろう。そもそもそこでの評価では小保方さん以外にもコピペ論文がいくつも見つかっていたようだが、これらに関しては小保方さん同様の処分が下るのだろうか。まぁ、多分そんなことはないんだろうけど。一年間猶予与えた上で世間の反応を含めて様子見なんでしょうな。

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読んだ本、視聴したテレビ番組・ラジオ番組・音楽の感想など。やや英語の作品や洋楽、特にイギリスのコメディやミステリ作品に偏向。

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